新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、多くの文化芸術関係者らが活動自粛を余儀なくされ、全国の映画館、劇場、美術館、コンサートホールなど、「文化芸術の送り手」となる団体や施設も、その足元を大きく揺さぶられています。文化芸術は私たちの社会、そして人類の発展において不可欠な存在でありながら、コロナ禍における影響への世間からの注目度は低く、政府からの支援が不十分であるとの声が上がっています。
銅は、楽器のほか、版画、彫刻など様々な芸術作品における材料として使われており、歴史的にも文化芸術とは深いつながりを持っています。国際銅協会と一般社団法人日本銅センターは、銅に関する事業開発、実施、または関連広報活動、調査・研究、技術開発など幅広い活動を担う、業界を代表する団体として、銅の超抗菌性能を含めた機能が発揮される環境作りに努め、消費活動と生産活動の中で人々を様々な菌やウィルスから守ることに取り組んでいます。今回は、コロナ禍において文化芸術産業が直面する困難の解消に貢献するため、多摩美術大学工芸学科金属プログラム研究室と協働し、社会情勢が激変する中で文化芸術産業を守る重要性を意識喚起するCSR活動を2021年に実施する運びになりました。
活動内容1:銅板の寄付
近年、銅価格が急騰する中、当協会・センターは、多摩美術大学工芸学科金属プログラム研究室の学生たちの未来に向けた新たな作品づくりを支援する活動として、作品創造の素材となる銅板を寄付しました。
銅の素材を無償提供したのは、銅を含む非鉄金属製品の製造・販売などを手がけるJX金属株式会社です。JX金属株式会社 代表取締役社長の村山誠一氏は、日本銅センターの会長でもあります。また、JX金属株式会社の子会社、パンパシフィック・カッパー株式会社は、国際銅協会の会員企業です。
【寄付内容】
小板(定尺板)
1.0×365×1200 40枚
1.2×365×1200 40枚
大板(メーター板)
1.0×1000×2000 5枚
1.2×1000×2000 5枚
活動内容2:展覧会「守る」展の開催
国際銅協会と一般社団法人日本銅センターは、2021 年 11 月8日(月)〜14 日(日)、多摩美術大学工芸学科金属プログラム研究室と協働し、銅を用いた在学生の工芸作品の展覧会「守る」展 を、都内のギャラリーROUTE GALLERYで開催しました。 展覧会では、多摩美術大学工芸学科金属プログラム金属研究室所属の学生による、銅を用いた工芸作品を7点展示しました。学業の中で作られ、コロナ禍の影響で発表の機会がないままに保管されてきた作品です。未来ある若者たちに対して、一般向けに作品を披露する機会を提供し、その作品を広く紹介することで、コロナ禍で大きな打撃を受けた文化芸術産業を守ることの重要性を発信しました。本CSRの活動の様子は、以下の動画よりご覧いただけます:
【展示期間】 2021 年 11 月8日(月)〜14 日(日)
【展示作品】 銅を用いた、多摩美術大学工芸学科金属プログラム研究室所属の学生による工芸作品7 点
【会場】 ROUTE GALLERY(東京都台東区東上野 4-14-3)
【作品紹介】
『いるところ』
鎌田
晶 サイズ H1300mm×W340mm×D340mm
技法 鍛金技法(変形絞り技法、他)
素材 銅、錫、真鍮、鉄
灯りの下で繰り返される私達の日常は、安心感に包まれたものだろう。その一方で、心のどこかでは常にいつ灯りが消えてしまうかわからない不安がくすぶっている。この電球頭の鳩は、私達の日常にともなう安心感と不安感を象徴している。
『自在人形』
LI MOLIN(リ モリン)
サイズ W200mm×D100mm×H480mm (本体) W380mm×D380mm×H1140mm (台)
技法 ロウ付け、打ち出し
素材 銀、銅、木、コンクリート
作品は作者の影響に対する外部のフィードバックである。
外部の影響は作者の環境、周囲の人々あるいは事である。
この影響に対するフィードバックは作品自体。外部の影響に表現の精度や認識の精度の不確実さより様々な作品が生れた。この作品を通して、観客に私の記憶中にある美しさを共感させたい。
『不機嫌』
神保 琴美
サイズ W370mm×D320mm×H460mm
技法 変形絞り、ヘラ絞り、TIG溶接
子供の頃に飼っていた出目金、改めて見ると面白い表情をしており、とても魅力的に見えました。この出目金は不機嫌そうな顔とポーズをしていますが、どこか可愛らしく思える作品になったと思っています。
『怪鳥』
坂口 美月
サイズ W380mm×D220mm×H240mm
技法 鍛金技法(変形絞り技法)TIG溶接技法
素材 銅
本作品は擬人化をテーマとし、オニオオハシをモデルに制作しました。オニオオハシの生息地やおおまかな性格を調べ、それを自分なりに解釈してデザインし、キャラクター化させた作品となっています。チャームポイントは大きな嘴とクリクリとしたお目々です。
『山羊の王様』
松木 建人
サイズ W700mm×D250mm×H1100mm
技法 打ち出し、硫化着色
素材 銅、バイン材
螺旋の角を持つマーコールという山羊を、打ち出しと鏨によるミゾでレリーフ表現した。『山羊の王様』と称されるこの動物を象徴的に扱うことで自然界に対するイメージを利用するというエゴイズムについて考える。
『身を潜めて』
西山 夢菜
サイズ H75mm×W260mm×D200mm
技法 変形絞り、緑錆、塩化アンモニウム、硫化着色
素材 銅
変形絞り技法という、一枚板で様々な形にする技法を用い、モリアオガエルと葉を制作しました。葉とカエルは緑青液•塩化アンモニウム水溶液で、目は610ハップで着色しています。カエルは葉の上でじっと隠れているつもりなので、皆さんに気付かれていないと思います。
『輪廻』
新田 まりあ
サイズ H320mm×W320mm×D320mm
技法 鍛金技法(変形絞り技法、TIG溶接技法)
素材 銅
人は輪廻転生を繰り返す生き物である。そのサイクルを「生、死、転生」をテーマにした三つの髑髏を、円状に組み合わせる事で表現した。作品の鑑賞者が円を描きながら作品を見ることで、作品タイトルである「輪廻」を体現する構造になっている。