殺菌の仕組み

殺菌銅によって細菌が死滅させられる仕組みは複雑ですが、その効果はいたってシンプルです。

殺菌銅は、細菌を多角的に攻撃することで死滅させることが科学的に示されています。環境表面素材としての殺菌銅の効果*の説明については、現在も研究が進められています。以下にQ&A形式でその内容をご紹介します。

銅はどのように細菌に作用しますか?

銅表面は2段階で殺菌効果を発揮することが科学的に示されています。まず、細菌が銅表面に直に触れると、その外膜が破れます。すると、外膜に開いた穴から細菌細胞の重要な栄養素や水分が失われ、細胞全体が弱るという仕組みです。

銅によって細菌に穴が開くのはなぜですか?

細菌のような単細胞生物も含め、あらゆる細胞の外膜には一定量の微弱な電流が流れています。これは「膜電位」と呼ばれますが、細胞の内外の電位差を意味します。銅の表面に細菌が付着すると細胞外膜でショート(短絡)が起こり、これによって外膜の強度が低下することが、穴が開く理由であると考えられています。

また、さび(局所的酸化)も外膜に穴が開く原因となります。これは、銅の単一分子(銅イオン)が銅表面から放出され、細胞外膜の成分(タンパク質や脂肪酸)に衝突したときに発生します。この「衝突」が酸素のある場所で起こると、「酸化的損傷」、すなわち「さび」が生じます。さびが金属片を腐食し、穴を生じさせるのに似ています。

細胞に穴が開いた後、銅イオンによってさらに細胞が破壊される仕組みはどのようなものですか?

細胞にとって最大の鎧である外膜が破られると、銅イオンが容赦なく細胞内に入り込んでいきます。そうすると、細胞内における重要な機能が危険にさらされます。銅は、細胞の中身を攻撃し、生存に必要な生化学反応である細胞の代謝作用を阻害します。代謝作用は酵素が触媒となって引き起こされますが、その酵素に過剰な銅が結合すると、酵素の活動が弱まり、やがて機能しなくなります。すると、細菌は「呼吸」や「栄養摂取」、「消化」、「エネルギーの生成」ができなくなります。

銅の効果がそれほど早く出るのはなぜですか? また、これほど多様な微生物に効果があるのはなぜですか?

専門家によると、銅表面に付着した細菌がすぐに死滅させられるのは、銅がさまざまな面に同時に作用するためであるとされています。外膜を破壊すると、銅は「行く手を遮る」酵素を無差別に不活性化させます。すると細胞は、栄養素の運搬や消化、損傷した外膜の修復、呼吸、増殖ができなくなります。

銅がさまざまな微生物に対し効果を発揮するのも、同じ理由と考えられています。

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*実験室試験の結果、MRSA、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ・アエロゲネス、緑膿菌、大腸菌O157:H7型の各細菌について、殺菌銅表面では、定期的に清掃することにより付着後2時間以内に99.9%超を死滅させられることが明らかになりました。殺菌銅表面は、標準的な感染対策を補完し、微生物汚染を減少させることが示されていますが、代替手段となるものではなく、必ずしも二次汚染や感染を防げるわけではありません。殺菌銅を導入した場合も、現在行っているあらゆる感染予防策を引き続き実行してください。

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